肺気腫

肺気腫をとらえ直す                       2006.3.15 有本 政治

1.肺気腫とは

 肺気腫は40~50代ぐらいから、高齢者にかけて発生する病とされていま
したが、近年は若年層にも多発するようになってきました。肺胞が次々とこ
われていき、一度こわれた肺胞はもとには戻らないといわれています。多少
の進行をくい止めることはできても、現代医学的には、治療のほどこしようが
ない病ともとらえられています。
症状としては、少し動くだけでも息切れや呼吸困難を起こすため、苦しく外出
できず、家の中に閉じこもりがちになります。横になることが多くなるため運
動量が極端に減り、食欲がなくなっていきます。肺は水分を膀胱に送る作用
があるため、肺機能の低下はむくみや頭痛も引き起こしていきます。
 肺には何億個もの肺胞がぶどうの房のようについていて、肺胞を包むよう
に毛細血管が張りめぐらされています。そして絶えず膨張、収縮を繰り返しな
がら空気の出し入れをしています。呼吸によって吸い込んだ新鮮な空気から、
血液中に酸素を取り込み、不要になった二酸化炭素を排出するというガス交
換(気体交換)を行なっているのです。
この肺胞の細胞がこわれて弾力性を失い、肺胞同士の境界線が次第になく
なり、隣接している肺胞が合わさり、大きな気腔となっていく症状を肺気腫と
いいます。肺の内部に大きな空洞ができてしまうのです。
 原因としては肺組織の老化や慢性の気管支炎、喫煙と大気汚染等があげ
られています。特に喫煙者に多くみられるため、たばこによる害が大きな要
因のひとつともされています。進行していくと耐え難い苦しみを伴うため、喫
煙ができなくなります。
最近発症率が高まる中、現代医学でははっきりした原因がつかめていない
のが実状です。

2.日本伝承医学的に肺気腫をとらえ直す

 肺気腫という病気が何故、命を守るための対応なのかを考察してみます。
すべての病気や症状には意味があり、最後まで命を守り、存続させるための
対応の姿であるという視点でみてみると、真の病気の姿が浮かびあがってき
ます。 肺胞同士がくっつき合い、巨大化して、空洞を形成していく肺気腫をとらえ直
すには、肺という組織全体の膨張、収縮のメカニズムを解説する必要があり
ます。 元来呼吸というメカニズムは息を吐きさえすれば、吸うという動作は必要あり
ません。息を吐けば、自然に吸えるしくみになっているのです。
水泳時のクロールの息つぎを考えてみればよくわかります。顔を水中に沈め
ているときに、鼻で空気を充分に吐き出し、息つぎをするときには顔を横に向
けて口を軽く開くだけでいいのです。クロールの息つぎがうまくできない人は、
吐くことよりも吸おうという意識が強いからです。吸おうとすればするほど体が
そり返り、水を吸い込んでしまい苦しくなります。
本来息は吐くだけで、吸う努力はいらないのです。それが肺の機能となります。

 この原理をヘーリングの模型を使って説明してみます。
ビンにふたをし、AとBの2本のストローをさしこみます(①図)。Aのストローか
ら息を吸うとBから空気が入り、中の風船がふくらみます(ビンの中の空気をス
トローで吸い込み外部にすてると、ビンの内部が陰圧になります)。ビンの中
は陰圧になればなるほど、空気が入ってきて風船はふくらんでいきます(陰圧
とは物体の内部の圧力が、外部より低い状態をいいます。例:真空状態は空
気中よりも陰圧となります)。

 ゴム膜を下に引くと内部の容積が拡がり、陰圧
を作り出すことができます。ビンの中の圧力が
外圧より下がるので風船に自然に空気が入り
ふくらみます。横隔膜や肋間筋の働きで胸郭が
拡がると胸郭の中の内圧が下がり、弾力性の大
きい肺は拡がり、気管から空気が入ります。逆
に胸郭がせばめられると、肺が圧縮され、肺の      図は準備中
空気が外へ出ていきます。

*胸郭とは胸椎、胸骨、肋骨の三者で構成されています。胸郭の内腔を胸腔といいます。

 もうひとつの陰圧を作り出す方法を②図で説明します。
ビンの底部に薄いゴム膜をはりつけます。このゴム膜を下方に引くことでビン
の容積を拡げることができます。これにより、内部の空気圧を減圧することが
でき、①図の実験と同等の結果を得られます。ビンの内部の空気をすてなく
ても、ビンの内部の容積を広くすれば、陰圧を高めることができるのです。
私たちの呼吸運動をつかさどる肺は、このへーリングの原理模型にしめされ
ることと同じことを行なっています。ビンの底に張ったゴム膜が横隔膜に相当
し、それを下に引っ張ると、胸郭にあたるビンの中の内圧が外圧より下がり、
空気が流入して風船(肺)がふくらみます。これが吸気にあたります。ゴム膜を
もとに戻すと、ビンの中の内圧が上昇するので風船は縮んで、空気は外へ流
出します。これが呼気の作用と同様になります。この機序が肺気腫をとらえ直
していく上で重要な視点となります。

 肺気腫になりやすい人は元来、遺伝的に心肺機能の弱さをもっています。
もともと息を吐き出す機能に弱さがあります。うまく吐けないため吸うことがで
きず、呼吸器系に支障をきたしてきます。せきやたんを出すことによって、のど
や気管支の血行を促し、機能低下した部分の働きを鼓舞させようとします。
また、せきやたんは気管支や肺の内部をきれいに保つために、有害物を口
から外へ排出させる大事な役割を担っています。
息苦しさや胸苦しさを伴いますが、そのサインによって体は反応していくので、
痛みや苦しみ、出ている症状を鎮痛剤や炎症止め等で止めてしまうと体はサ
インを失い、自力で再生しようとする力を失ってしまいます。

 また、心肺機能が弱い人は、体にねじれのゆがみがあります。心臓機能が
弱いため、心臓の吹き出しを守ろうとするため体は右ねじれを起こしていきま
す。体にねじれが生じると、横隔膜の上下動、肋骨の開閉が制限を受けます。
そして肺の容積を拡げることができにくくなり、肺全体の陰圧状態を作り出せ
なくなります。体はこれを回避しようと働き、酸素を充分に取り込もうとするた
めに、肺の内部に空洞を作ってまでも、肺内部の陰圧を高めていきます。肺
胞を次々に破壊し肺胞同士をくっつかせ、ふくらませ、気胞を作り、肺の内部
に肺気腫としての空洞を形成していくのです。空洞を形成することで容積を
拡げ、内部に陰圧を作り出し、残った肺胞に空気を充分に取り込ませ、ガス
交換を守り、命を存続させる対応処置をとっていくのです。

 体に生じるねじれのゆがみが横隔膜の上下動を制限しますが、もうひとつ
の要因として精神的ストレスの持続による肝臓の肥大、充血、炎症があげ
られます。肝臓は体の中で最大の臓器になります。そして横隔膜のほとん
どが肝臓と接触しています。つまり肝臓が肥大することによって、横隔膜の
動きが大きく制限されてしまうのです。横隔膜の動きを取り戻すためには、
肥大した肝臓の炎症をしずめる必要があります。

 横隔膜の動きは呼吸に密接に関わっています。横隔膜は息を吐くこと
で上方に上がり、吸うことで下方に下がります。これに連動して、全肋骨
の開閉運動も起こります。息を吐くときは下部肋骨が収縮し、息を吐きや
すくします。息を吸うときには上部肋骨が持ち上がることで胸腔を広げて
くれます。この動きによって、胸腔部(胸椎、胸骨、肋骨で形成される心臓
や肺のおさまっている部分)の容積が拡がり、内部に陰圧状態が作られ、
肺内部の肺胞がふくらみ、空気が充分に取り込めるようになっていきます。
呼吸作用の約70%は横隔膜の上下動に依存しているといわれます。
横隔膜の働きは、呼吸にとって重要な役割を果たしているのです。

3.肺気腫の対処法

 肺気腫を改善するためには、まずねじれた体のゆがみを取り去り、横隔
膜の正常な動きと、肋骨の動きを取り戻す必要があります。そうすれば、
肺全体の容積(胸郭)を拡げることができます。これにより陰圧が作り上げ
られ、肺胞の中に充分空気が取り込め、肺胞の破壊膨張をくい止めること
ができます。
綿(わた)のように幾重にも連なる脳の毛細血管の数個所に梗塞(脳梗塞)
を起こしても、命に支障がないように、両肺で約6億個もあるという肺胞の
わずか数個所が破壊されても、けっして命に別状はありません。すでに破
壊されくっつき合ってしまった組織はそのまま停止状態となりますが、他の
肺胞の組織が活発に働き、機能低下した部分を補ってくれます。

 肺気腫の初期段階はせきやたん、息切れや胸苦しさが続きます。以前で
はぜんそく、気管支炎等ですまされていたこれらの症状も、医学の進歩と
共に初期段階において肺気腫という病名がつくようになってしまいました
(若い人に多くみられるようになったのも、最新機器の検査によって初期の
うちに発見されるケースが多くなったともいえます)。

 徐々に進行していく、完治しにくい、治療のほどこしようのない病として宣告
されることによって、不安や恐怖心をつのらせ、症状を深刻化させてしまう
ケースも少なくありません。精神状態の乱れが肝臓を充血させ、血液の循
環、配分を乱し、健康を害していくのです。体は心が支配しているといって
も過言ではありません。
また、初期段階でせきやたんを止める薬や炎症止め等の薬を服用してしま
うと、ますます病を深刻化させてしまうことになります。症状の出ている内部
には必ず炎症があります。内部の炎症を封じ込めてしまえば、体はさらなる
対応にせまられます。体は肺の機能を守るために空洞を大きくしているのに
薬等でおさえてしまうと、次なる対応としての肺炎や肺結核、肺がんとなって
までも命を守ろうとしていきます。
初期症状の段階で日本伝承医学による三指半操法、リモコン操法、心臓調
整法及び、せきどめの処方で充分に症状を改善させ、心肺機能を高めていく
ことは可能になります。また、肝の叩打法により、肝臓の肥大、炎症を取り去
り、肋骨、横隔膜に動きを取り戻していくことができます。
体に起こる症状はすべて命を守るための対応の姿であるという認識のもとに
無意味な検査は極力避け、肺気腫そのものの意味を知ることにより、正しい
対処法を選択していただきたいと思います。

4.家庭で行なえる療法

 ひとり操法としての三指半操法、うなじむなさき法、たたき操法、集約拳、
頭頂叩打法をとりいれます。これらの基本操法で体のねじれ、ゆがみの原
因となっている心臓、肺の機能を高めることができます。
また体全体の血液の循環、配分を乱しているおおもとの肝臓の充血をとる
ために、肝臓の局所冷却法が重要な意味をもってきます。冷却によって、
肥大した肝臓の炎症がおさまれば、横隔膜に動きが出て、らくに呼吸がで
きるようになります。肝臓の充血がとれ、血液の循環がよくなれば、肺の血
液循環もよくなり、酸素が充分送り込まれ、息苦しさや胸苦しさは緩和されて
いきます。

肺気腫を含めて、病症部には必ず異常な熱が発生し、炎症状態となってい
ます。頭部は特に熱がこもりやすい場所なので、頭部冷却も合わせて行な
うようにします。せきが出て苦しいときにはのどや肺部も冷却します。氷の
粒をなめるのも効果的です。
また呼吸法として、口すぼめ呼吸を行ないます。口をすぼめて息を細く長く
吐きます。口をすぼめると息に勢いがつくので気管が拡張され、肺に充分な
空気を送り込むことができます。
苦しいからといって、安静にばかりしていると、食欲もなくなり体はますます
機能低下を起こし、呼吸器系を弱らせていきます。息苦しくても自分のペース
でゆっくり動き、日常生活を営むことが大切です。人は動き、歩くことで血液の
循環を維持し、心臓のポンプ機構を働かせることができるのです。
 病や体に起こる症状は、病院や薬任せにするのではなく、自らの力で治す
という気もちをもって、自分でできることを日々の生活の中で実践していく姿
勢が何よりも大切です。

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