耳鳴り

人の体のナゼとワケ~耳鳴りの本質                               2015.4.26 有本 政治

日本伝承医学の疾病観は、現代医学の捉え方とは異なり、病気や症状を単に一方
的に悪い反応とは捉えず、何かを元に戻すための、一時的に必要な”対応”という視
点でみています。この視点で症状と向き合う事により、病気や症状の根拠と機序を
理解し本質を見ることができます。本質がみえてくると不安も軽減され、正しい対処法
もわかってくるのです。

生きている体の表す反応は、意味の無い事はしません。その反応(症状)が、たとえ
苦痛や不自由さを伴っていても、体をより悪くなる方向にもっていったり、命を縮めた
りすることはないのです。その真の意味とは、体への警告サインであり、元に戻すた
めの一時的な対応であり、最後の最後まで命を守るためになされているのです。
この捉え方で耳鳴りの本質を解説していきます。

まず耳鳴りの現代医学的な所見と治療法をみていきます。耳鳴りとは、外で音が
していないのに音が聞こえる状態をいいます。 多くの耳鳴りが原因不明で、その仕
組みは、はっきりしていません。内耳から脳に至る聴覚経路の何処かで、外からの音
入力に関係なく、聞こえの神経が活性化される事で生じると推測されています。外界
が静かになる夜や早朝に大きく聞こえるのが一般的です。耳鳴りは様々な病気と共に
に発症します。突発性難聴、メニエル氏病、音響外傷等が代表的です。加齢に伴い、
耳鳴りが起こる事もあります。耳鳴りにはキーン、チー、シーという高い音と、ジーと
蝉の鳴くような低い音の二種類が一般的です。

治療法は、原因となる病気がはっきりしていれば、その病気を治療する事で軽減す
る場合もありますが多くの耳鳴りは原因不明で、特効薬がなく、様々な治療法や薬が
試みられます。よく用いられるのが、内耳や脳の血液循環を改善する薬、筋肉の緊
張を和らげる薬、精神安定薬、その他、局所麻酔薬の静脈注射、鼓室への副腎皮質
ステロイド薬の注入などがあります。高度難聴に伴う耳鳴りのある場合は、人口内耳
の埋め込み手術も行われます。以上が現代医学的な所見と治療法になります。しか
しほとんどの場合が原因不明であり、確定した治療法が無いのが現状です。

次に日本伝承医学の疾病観に基づいて耳鳴りの本質を解説します。冒頭に記載した
ように、体は意味の無いことはしません。何かの警告信号であったり、何かを守るた
めに必要だから対応しているのです。この視点から考察する事で、耳鳴りの本質が
見えてきます。

まずは耳鳴りが、脳内の状態を鼓舞、覚醒させたり、鎮静させるために発する”補正
信号”の役割と、異常な脳波を修正するための”修正信号”の役割を担っているという
観点から説明していきます。
耳鳴りの感じる音階は主に、キーンというような高い音と、ジーという低い音の二種類が
あります。キーンという高音は、脳内の機能が低下している状態で、「受容、伝達、
処理、反応」の能力が落ちていて正常な機能を発揮したり、維持できない場合に、
機能を鼓舞したり、覚醒させるために発しています。逆にジーという低い音は、
脳内の機能が興奮状態にあり、脳の持つ「受容、伝達、処理、反応」の能力に支障を
きたし、これを鎮静させるために発しています。

つまり耳鳴りは脳の機能低下及び亢進を補正するための、補正信号であり、脳波を
修正するための修正信号であり脳の機能を守るために必要な対応をとっているので
これを薬で、封じ込めたり、止めてはならないのです。補正信号が途絶えてしまうと、
脳内はますます受容、伝達、処理、反応能力を失い、脳波が乱れ、脳内環境が悪化し
てしまうからです。体はさらに次なる対応に迫られ、状態は深刻化し、重篤化していくの
です。重篤な症状とは、脳血管障害(脳溢血、クモ膜下出血、脳梗塞等)や脳腫瘍が
挙げられ、命に関わる状態に移行してしまう場合もあります。

脳波は現代医学の診断の中で、脳の異常を検査する手段として広く活用されてい
ます。検出される異常な脳波の波形から、脳腫瘍、脳外傷診断、脳血管障害、脳
炎等の診断と判定ができるため、大きな手掛かりとなります。つまり、良い脳波に
戻せば、症状を改善させることができるということです。耳鳴りという音の振動
を利用して、私たちの体は天然に脳波の修正をし、良い脳波に戻してくれているの
です。耳鳴りはこのように脳波の修正信号の役割を果たしているのです。

音や光は、視聴覚療法として活用され、気持ちを鼓舞したり、落ち着かせる働き
がある事はよく知られています。耳鳴りの音は、心地良いものではありませんが、
生きている体は脳内の機能を維持するためには、自ら信号を発してこれらの機能
を補正する対応をとるのです。一例を挙げるならば、精神疾患の両極性障害の患
者に、鬱(うつ)の状態の時には覚醒成分の入った薬を処方し、躁(そう)の状態の
時には鎮静成分の入った薬を処方する対応と似ています。こちらは情緒の安定を
図る対応が主体になりますが、耳鳴りは脳の機能安定のために、高音と低音により
鼓舞と鎮静を使いわけているのです。

また耳鳴りには、脳内の余計な熱を除去し排出している働きもあります。象(ぞう)は、
鼻で水を吸い込み頻繁に自分の頭に水をかけることをしていますが、それだけでは
対応しきれず大きな耳をパタパタさせて、脳内の熱を放出させ、体温調節しています。
人間も同じで、過労や心労、様々なストレスや頭の酷使で、脳内に熱がこもりやすく
なっています。そのため、頭部には、目、鼻、口、耳と、人体中で最も穴が集まっている
のです。これはこれらの穴から、頭部にこもった余計な熱を排出させているからです。
人は考える脳があるため、頭に熱がこもりやすい生き物です。頭に熱がこもると、炎症
が起きて脳が破壊されていきます。耳鳴りを含め耳に出る症状は、脳内の熱を排出さ
せ、脳を守っている手段と言えます。

昨今、羽のない扇風機が出始めていますが、これは土台から吸い込んだ少量の空気で、
小さな気流を生み、周りの気流を巻き込み、電気(電力)を発生させ大きな風を生み
出し、空気を冷却していきます。耳鳴りにもこれと同じような原理があてはまります。
頭に熱がこもり、脳に炎症が起きている場合、目や口、鼻の穴からだけでは対処でき
なくなり耳の穴を介して体は対応していきます。常に耳鳴りを起こして、鼓膜を振動させ
(微振動)、微細な電気を発生させ、頭部に伝搬させています。頭部に微細な電気が発生
すると、硬膜に振動が伝わり、停滞していた箇所に動きが出て脳内の血流が良くなるの
です。耳の中は空洞になっていて、粘膜が換気機能(空気の入れ替え)と熱の排出機能
の役割を担ってくれています。しかし頭に熱がこもり、脳圧が高くなってしまうと、耳内部
の空気圧が正常に働かなくなり鼓膜がうまく振動することができなくなります。そのため体
は耳鳴りを起こして、微細な電気を発生させ、頭部内に小さな気流を生み、大きな気流を
起こし、脳内を冷却し、換気機能と排出機能を正常にし、頭部にこもった余計な熱を体外
へ排出しているのです。

また耳鳴りには情緒安定作用も含んでいます。耳鳴りが起こっている状態の時の脳
内には、熱がこもり炎症が起き、脳波にも乱れが生じ、精神状態も不安定になって
いるからです。現代医学の原因論の中にも、耳鳴りは精神的ストレスとの関連が
考えられるとの指摘が見られています。脳波の波形診断にアルファ波とベータ波とい
う分類があります。気持ちが落ち着いてリラックスしている時は、脳波がアルファ波に
なり、イライラしたり、気持ちが沈んでいる時にはベータ波が検出されます。(頭痛のあ
る時の波形は当然ベータ波になります)。精神的ストレスの持続は、良い波形のアル
ファ波を生み出せず、ベータ波が持続する事になります。これは脳神経に活性化をも
たらさず、これを補うために脳内の神経伝達物質や脳内ホルモンを大量に消費する
ことになります。この持続は脳の前頭葉の働きに負担をかけ、前頭葉に熱をもたせま
す。前頭葉の働きは情動の中のやる気や、プラス思考を生み出す所と言われてい
て、ここに熱がこもる事で情緒が不安定になり、精神状態が悪くなります。さらに熱の
蓄積は脳の中心部にも及んで、脳幹部に影響を与えてきます。

脳幹部は生命維持機能に指令を出すと共に情動の安定作用も司っている大事な所
になります。ここに熱がこもってしまうと、情動のコントロールに影響が生じるのです。
この精神的ストレスの持続が脳波に影響を与え、脳内の機能を低下させる一因とな
っていくのです。これが耳鳴り発生の機序になります。耳鳴りの発症は長い時間の経
過の中で徐々に進行していく場合が多く、年齢に関わらず、精神的ストレスの持続が
長期に及んでいる場合に発症する傾向がみられます。私のこれまでの臨床において、
耳鳴りを発症している方は、性格的には我慢強く感受性が豊かな人、繊細で敏感な人、
常に気配りをして、人のことを考えているような方に多くみられます。体質的には、腎臓機
能に低下がみられているかたになります。「腎は耳に開竅する」(じんはみみにかいき
ょうする)と言うように、腎臓の反応は耳に表われてくるからです。また、耳鳴りがある
人は生命力と免疫力の低下が顕著に見られます。生命力や免疫力が低下している
時は、耳に症状が表れやすいのです。耳の機能の減退はこのように、単に耳だけで
発症しているのではなく、精神状態や内臓機能、生命力や免疫力の低下とも大きく関
わっているのです。

それではどうすれば耳鳴りを改善に向かわせることが出来るかを解説していきます。
耳鳴り発生の機序が、脳内の熱のこもりと脳内の各種機能(受容、伝達、処理、反応)
の低下や亢進を補正し、脳波を修正する対応なのですから、耳鳴りを停止させるため
には、脳内の環境を整える必要があります。

脳内環境の低下の要因は様々ですが、根本的な原因は脳内の血液不足(虚血)
と脳内の毛細血管の血流の停滞や詰まりがあげられます。これらを元に戻す事が、
脳内環境の改善には不可欠です。また耳の衰えは生命力や免疫力の低下が背景
にあるので、これらも高める必要があります。

では脳の虚血(血液不足)と脳内の毛細血管の流れの停滞や詰まりは、どういう
機序で起こるのでしょうか。これは全身と脳との関連の中から発生しているのです。
脳は、人体中で一番血液を消費する場所です。常に新鮮な血液が供給され続けな
ければなりません。故に血液の不足が起こりやすい場所になります。つまり脳の虚
血と毛細血管の停滞と詰まりは、全身の血液の循環、配分、質(赤血球の連鎖)
の乱れによって発生する事になります。全身の血液の循環、配分、質の乱れは何
によって起こるかと言いますと、それは以下になります。

全身の血液の循環に関与するのは、心臓です。心臓のポンプ力が弱ってくると、体
の上部に位置する脳へ、血液を供給する力が低下します。これが脳の血液不足
の一因になります。また血圧も、血液を流す力として、全身の血液の循環に関わりま
す。血圧降下剤の使用は、血液の流れを弱め、脳の虚血を起こす要因となります。
次に全身の血液の配分に一番影響を及ぼすのは肝臓になります。血の固まりのよ
うな大きな臓器である肝臓に、血液を大量に奪われることにより、全身の血液の配
分が乱れ、脳への血液供給が足りなくなり、脳に虚血が生じます。

肝臓に大量に血液を奪われるのは何故かと言うと、これは精神的ストレスの持続が
原因になります。脳内の神経の伝達物質や脳内ホルモンは、多くは肝臓で作られ、
脳で消費されて、また肝臓に還って分解されます。
精神的ストレスの持続は、常に脳を稼働させる事になり、これらの物質を常に使
用します。これはこれらの物質を生産、分解する肝臓に負担をかけ、肝臓の機能低
下をもたらすのです。体は肝臓の機能を元に戻すために、肝臓に大量の血液を集
め、熱も発生させる事で機能回復を図るのです。これにより全身の血液の配分が
乱されるのです。これが脳の血液不足を発生させています。

次に全身の血液の質(赤血球の連鎖による、ドロドロベタベタ血液)を乱すのは、
胆嚢になります。”肝胆相照らす”のことわざ通り、肝臓に内包される形で存在す
る胆嚢は、肝臓と連動して機能低下を起こします。体はこれを元に戻す対応として、
胆嚢に血液を集め、熱を発生させ、腫らす事で機能回復を図ります。胆嚢という袋
が腫れてしまうと、袋を収縮する事が出来なくなり、胆汁を分泌する事が出来なくな
ります。胆嚢から放出される胆汁は、その極めて苦い成分により、体内の炎症を鎮
め、血液の熱を冷ます作用を担っています。これが分泌されない事により、血液は
熱を帯び、熱変性によって赤血球のくっ付きが発生します。何個もの赤血球が連鎖
し、毛細血管の内径よりも大きくなる事で、全身及び脳内の毛細血管の血流を停滞
させたり、詰まりを生起させるのです。これが全身の血液の流れを遅くし、脳への血
液供給不足を起こすのです。さらに脳内の毛細血管の流れの停滞と詰まりを発生さ
せる最大要因となります。

以上の機序により、脳の虚血と脳内の毛細血管の流れの停滞と詰まりは起こって
いるのです。前述してありますように、脳は常に新鮮な血液を大量に必要とする
場所です。脳内に血液が不足したり、脳の毛細血管内の流れに停滞や詰まりが起
こった場合、少ない血液を早く脳全体に巡らせるためと、毛細血管の停滞と詰ま
りを取り除く対応として脳圧を上昇させるのです。これが脳圧が上がる理由にな
ります。脳圧の上昇は必要な対応なのですが、この持続により脳に熱が発生して
行きます。また毛細血管の流れの停滞や詰まりも流れの抵抗が起こり、これも熱
発生の一因となります。こうして次第に脳に熱の蓄積が起こっていったのです。
この脳内の熱の蓄積が、脳内の環境に影響を与える最大要因となっていったので
す。また昨今のパソコンやスマートフォンの使用過度も目や脳を疲労させ、脳に熱
をこもらせる外的要因としてあげられます。

脳の熱のこもりは大脳だけに留まらず、次第に脳の中心部に及び、脳幹の機能に
影響を及ぼします。脳幹は別命”命の座”と呼ばれ、基本的な生命維持機能に指令
を出す中枢に当たります。ここには、呼吸、心拍、体温、ホルモン、自律神経、
生殖器といった重要中枢があり、情緒の安定作用も司っています。ここに熱がこ
もる事で機能低下をもたらすのです。これは確実に生命力や免疫力を低下させま
す。もちろん、生命力や免疫力の低下の最大の理由は自身の生活習慣の間違いが
根底にあります。症状の改善のためには、生活習慣改善の自己努力も必要です。

以上の根拠と機序により、脳内の環境が著しく悪化していったのです。これが脳
内の様々な機能を低下させたり、あるいは亢進状態に陥らせ、脳波を乱したのが
原因なのです。そしてある限界を超えた場合、体はこれを補正する措置を講じる必
要に迫られます。これが耳鳴りという補正修正信号の発生につながったと考えられ
ます。

耳鳴り発生の根拠と機序が、このように明らかになる事で、どう対処すれば良いか
も見えてきます。耳や脳だけを対象にしていては、問題は解決しません。病の背景
に存在する自身の低下した生命力や免疫力を高め、直接的要因となっている全身
の血液の循環、配分、質の乱れを正す事で、脳の虚血と脳内の毛細血管の流れの
停滞と詰まりを除去し、さらに熱のこもり取り除く事が必要です。また脳や耳に直接
作用させる処方も必要になります。これらを確実に実行していけば、脳内の環境は
元に戻り、耳鳴りという補正修正信号を発する必要はなくなるのです。
上記の目的を達成する上で、最適なのが日本伝承医学の治療になります。

生命力とは言い換えれば、新たな細胞を次々と生み出す力に相当します。つまり細
胞新生力です。免疫力とは、細菌やウイルスから人体を守る力であり、血液の中の
白血球が主体的に働いています。当然赤血球や血小板も免疫の担い手であり、血
液全体が免疫の主役になります。この血液をしっかりと生産しなくては免疫力は上が
りません。つまり免疫力とは造血力に相当します。

細胞新生力と造血力は共に人体の骨髄が担っています。生命力や免疫力を高める
ためには、骨髄機能を発現する事が必要になります。日本伝承医学の治療は骨髄
機能を発現する事を目的に構築されており、生命力や免疫力を高めるには有効で
合理的な方法になります。

次に全身の血液の循環、配分、質を元に戻す必要があります。このためには
内臓の肝臓、胆嚢と心臓の働きを元に戻さなくてはなりません。つまり肝臓(胆嚢を
含む)と心臓という事になります。日本伝承医学の治療は、内臓的には、肝臓と心臓
を重要視して、肝臓、胆嚢と心臓の治療を中心に技術が構築されています。古代か
ら継承された心臓調整法と肝胆調整法により改善していきます。心臓のポンプ力が
強まる事で血液の循環を助け、肝臓の充血を取り去る事で血液の配分を整え、胆
汁の分泌を促進する事で血液の熱を冷まし、赤血球連鎖を除去します。これにより
脳への血液供給を改善し、脳内の毛細血管の停滞と詰まりを回復させます。
古来から伝わる耳の調整法も用います。

さらに家庭療法として推奨する頭と肝臓の氷冷却法は、脳内の熱のこもりと脳圧を
除去し、肝臓の熱と充血をとるためには大事です。合わせて額と首の冷却もし、前頭
葉と脳幹の熱を冷まします。冷却場所は気持ち良い箇所を微妙に探し、冷た過ぎる場
合はバンダナ等でくるんで調整します。症状に応じて、耳の周囲や後ろも使用しま
す。以上により、脳の血液不足、脳内の熱のこもり、脳圧の上昇、毛細血管内の流
れの停滞と詰まりが整います。これにより脳内の機能低下や機能亢進を元に戻し、
脳波の安定を図り、耳鳴りと言う補正信号や修正信号を発する必要が無くなるので
す。日本伝承医学では耳鳴りに対してこのように考えて取り組んでいます。

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