発熱をとらえなおす

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発熱をとらえ直す  ~風邪の正しい治し方~                      2005.4.9 有本 政治

ほとんどのかたが発熱は悪いことと考えていると思います。発熱時の頭痛、不快感、体のだるさ、筋肉や関節の痛みなどは、つらいものです。熱をいっときでも早く下げたいと思うのは当然ですが、解熱剤で急速に熱を下げてしまうと、様々な症状を生み出してしまうことになります。また、解熱剤を繰り返し使用することにより、重篤な病を併発してしまう場合もあります。発熱を一方的に悪い症状としてとらえ、薬で急激に下げてしまうことは極めて危険です。発熱のメカニズムと効用を正しく理解し、適切な処置を心がけて頂きたいと思います。

人体内の熱の特性

私たち人類は哺乳類に属し、恒温動物という種族に入ります。恒温動物というものは、体内温度をある一定の温度に保つことで、生存を可能にしています。そして人体はその成分の三分の二が水で構成され、体温は36度~37度という至適温度を持ち、水と熱の反応系の中で生命活動を営んでいます。水という物質は、冷めにくい性質をもっています。お風呂のお湯を考えてみると、水の性質がよくわかります。 水は、ガス湯沸かし器で一瞬にしてお湯になりますが、42 度位のお風呂の温度を元の水の温度に戻すには、大変な時間と労力を必要とします。また水には、物質が溶け込みやすい性質があります。人体における体液、血液がこの水にあたります。私たちの体は体液、血液を循環させることで、生命のしくみとしての物質・エネルギー・情報を体の隅々まで運ぶことができるのです。体温とは体内の水の温度と言い換えることができます。 この水の温度を36度~37度の間に保っていないと、生命 は維持していくことができません。体は36度5分以下になれば発熱することで体温を上昇させ、36度5分以上になれ ば放熱することで体温を降下させる機構が働きます。特に高くなった体内の水の温度をいかに速やかに下げ、熱をすてていくかが生きるための重要な課題になってきます。そのため人体には熱を下げるための機構を幾重にも完璧に備えている のです。人体内の熱に対する対応には、低温に対しては順応 性が高く、高温に対しては非常にもろい特性があります。

最近研究されている恒温動物の低体温保存の実験では、体温を32度前後に低下させて、これを長期に持続させても、動 物の体に何の変調も起こらないことが報告されています(動物 の冬眠が相当します)。これは人体にも応用され低体温療法として脳障害の治療として大きな効果をあげています。また、 脳(頭部)の冷却療法は、脳出血、脳梗塞、めまい、頭痛等の治療法として、大変有効になります。36度5分より4~5度下がっても体に変調は起こらず、病気治癒に効果を発揮していくのです。逆に体温が4~5度上昇して、40度前後になると私たちの体は生活に支障をきたしてきます。 36度5分から5~6度上昇し、42~3度に達すると細胞 内のタンパク凝固が起こり、死の転機をむかえます。 わずか5~6度の上昇で死に至るほど、人体は熱に対してたいへん弱い体質をもっています。 それゆえ高熱に対してはこれを速やかにすてるシステムを人 体は完璧に備え、命を守ってくれています。熱が必要なときにはすぐに発熱し、必要がなくなれば速やかに熱をすてるシステムが作動するように、私たちの体は作られているのです。

発熱することで何をしているのか

人体内の発熱のメカニズムを解説してみましょう。 私たちは冬場寒い時など、手が冷たければ無意識に手 をこすり合わせて摩擦熱を発生させています。また体 を縮めて小刻みに体を振動させて、ぶるぶる震わせて熱を発生させようとします。 体をこすったり震わせたりすることで摩擦熱を応用しているのです。これが人体の発熱のメカニズムになります。この発熱の機序はミクロな場での発熱の機序と 同等です。体を構成している分子の運動を平常より活 発にさせることで、分子間に摩擦熱を発生させています。電気製品の電子レンジの例がこれにあてはまります。 電子レンジで水を沸騰させる場合、目に見えないマイク ロ波を水に照射することで水の分子運動を活発化させ、その摩擦熱で水を沸騰させます。正確に言うと、マイクロ波2450MHZを照射して水分子を1分間に24億5000万回転振動させています。だからあっという間に水が沸点に達します。人体の発熱のメカニズムもこのように作動しています。体温を40度に上げるのは短時間で起こります。今まで元気に遊んでいた子どもが急にぐったりして、熱を測ってみると40度近くになっていたという例はよくあります。知恵熱といわれる現象です。しかし、翌日になると平熱に戻り、また元気に 遊びはじめます。

私たちの体は必要なときにはすぐに発熱させ、必要がなくなれば速やかに熱をすてるシステムが作動するようになっているのです。では発熱することで、体は何をしているのでしょう。   発熱は、低下した体温を上昇させて、全身の体温を上げることで、体の分子の運動を活発にし、60兆に及ぶ 全細胞の活性化を図っているのです。発熱は体を良い状態に戻すために働く、自己良能の最初の発動の姿になります。人体は約60兆に及ぶ細胞で構成されています。この細胞のひとつひとつは細胞膜によって仕切られ、細胞と細胞の間は体液で満たされています。細胞の内の水分と 細胞の外の水分は、細胞膜を通して内外と交流しています。この水の温度が体温になります。細胞を活性化するためには、内外の交流を活発にしなければなりません。体温が上がることで、水の分子は小粒子化し、細胞膜の透過性が高まるのです。全身を発熱させることで、細胞と細胞外の水の交流を促進させます。そして全細胞を活性化することで体の状態を元に戻そうと働くのが発熱の作用になります。また発熱時には、血液の成分中の白血球の数に変化が起こります。免疫力は白血球によって維持され、白血球は 私たちの体をウイルスや細菌の侵入から守る免疫システムの要となっています。この白血球の数は、体温によって大きく変化していきます。体全体の免疫力が低下したときは、白血球も低下しています。発熱して体温が上昇すると、白血球は急激に増加します。これによって、ウイルスや細菌と闘う力を増強させて、体を守ってくれているのです。このように全身の発熱とは、生命を守る上での一番初期の発動の姿であり、この発熱によって命は守られていくのです。

発熱を解熱剤で急激に下げてしまうとどうなるか

病気とは、その本質を見ないで表面に現われた症状だけで対処していくと、根本的な解決にならないばかりか、新たな病に移行する機序を体に与えてしまうことになります。体に現われる病気や症状には意味があります。発熱という症状は、全身60兆の細胞の活性化を図り、体を元に戻そうとしている対応の姿であり、最も大切な初期発動の形態になります。熱を出す必要があって発熱させているのであり、この回復のために必要な熱を、解熱剤によって急速に押さえ込んでしまうと、さらに次の症状へ移行してしまうことになります。すでに十数年前から、風邪による発熱は解熱剤を使用しない方が治りが早いという報告が、医療現場や学会において取り上げられていました。現在の解熱剤は、解熱作用が数段に強くなり、39度近い高熱が一時間くらいであっという間に下がってしまいます。このように熱を急激に下げてしまった場合、弱年層(15歳以下)や高齢者(65歳以上) は、脳障害や脳瘍を併発しやすくなります。発熱させて、分子運動を活発に行なっているのに、解熱剤で脳の発熱中枢を麻痺させてしまうと、熱の出場所を失った人体組織は、より深部に発熱、炎症を起こすように働きます。人体の中心部、髄膜(ずいまく)という中枢の脊髄の膜に熱の出場所が移行してしまうのです。風邪による発熱から髄膜炎を発症してしまうのは、このように熱を急激に下げてしまうからになります。

体は発熱することによって、風邪のウイルスや細菌を退 治しようと白血球を増やしています。それでもその働きを 人為的に阻止してしまうと白血球が増えず、ウイルスを退 治することができなくなります。いつまでも風邪の症状を引きずるばかりか、髄膜炎という重篤な病に移行する引き金となってしまうのです。 またすでに発熱した熱は、通常の放熱システムには移行せず、熱をすてる手段として全身性に皮膚湿しんを発生させる場合もあります。しかしこれも熱を体外にすてる非常手段としての対応になるので、悪い反応として薬で押さえ込んでしまうことのないようにしてください。症状は、封じ込めれば込めるほど、より内部へ、深刻な状態へと進行していきます。また解熱剤を使って無理やり熱を抑えてしまうと体は異様にだるくなり、頭がぼうっとしていきます。すっきりしない後遺症が2~3週間残り、その後、微熱が2~3ヶ月にもわたり続く場合もあります。微熱とは、体が発熱して元に戻したくても、体力や免疫力が低下していて高熱を発生できない状態のときに起こります。この微熱をさらに薬で抑える処置を繰り返していくと、急性白血病に移行する場合がみられます。 しかし急性白血病も体の免疫力を高めるために、白血球を急激に増やそうとしている命を守る対応の非常手段になります。これを異常としてとらえ、白血球を減少させる処置をしてしまうと、免疫力が弱まり、命を縮めてしまう結果になります。発熱の機序をしっかり認識し、解熱剤を濫用することがないようにしていただけることをせつに願います。

発熱は回復治癒への第一歩

体が体力や免疫力を失いつつある場合、元に戻す対応処置として体は発熱現象を起こします。体を構成する分子の運動を活発にすることで体を発熱し、約60兆に及ぶ全身の全細胞を活性化するためです。全身を構成する全細胞の働きを高めることで回復のための機序を獲得しているので す。発熱には全身性の発熱と、局所(内臓、組織、器官)の発熱があります。全身性の発熱の方が初期的な対応であり、この繰り返しでも回復できない場合に体は次に局所に発熱、炎症を起こし、回復を図ろうとします。病名のつく病気のほとんどが、何々炎という炎症状態になります。局所の発熱、炎症は、体の健康状態がある一線を越えて、全身性の発熱では対応できなくなってしまった場合に生じてきます。次の段階的対応として局所に熱を発生して機能回復を図ろうとするのです。よく、何々炎という内臓の病気になった人がその経過の中で、以前は一年に一回位風邪をひいていたのにここ数年は風邪をひかなくなったといわれることが臨床上しばしば見うけられます。全身発熱の代表が風邪という病気になりますが、風邪には落ちた体力と免疫力を回復する作用がある側面を見落としてはなりません。風邪の症状の一番の特徴は、全身性の発熱になります。 この発熱を悪い対応としてとらえるのではなく、バランスを崩している体内の掃除、免疫力低下を回復させる治癒への第一歩としてとらえることが大事です。私たちの体は、全身性の発熱を起こすことで、回復治癒への機序を与えているのです。慢性的な内臓疾患や虚弱体質の人が回復する過程のある時期に、必ず38度5分以上の発熱がありますが、これは必要条件であり、この機序をしっかりと把握しておくことが大事です。 発熱は解熱剤を使用しないで、自然に通過させて解熱させていく必要があります。この発熱によって、一気に様々な症状が消失していく起点となるからです。

風邪は万病を治す

風邪に効用があることは、まだあまり知られていないのが現状です。私の三十年の臨床生活の中で、慢性病や重篤な病の人は治療後、治癒反応の第一歩としてほとんどの場合、発熱(風邪症状)を引き起こしています。早い人では一回の治療だけで、風邪をひいてしまうことがあります。日本伝承医学の治療は、免疫機構の総本山である骨髄の機能を発現させる治療法であるため、このような治癒反応が瞬時におこる可能性があります。私の治療院では、初診の患者さんに対しては治癒反応として、風邪(発熱)をひくことがあるということを必ず注意事項として明記しています。 その際の処置として解熱剤で熱を下げない点を強調するようにしています。風邪による全身的発熱は、全細胞に活力を与え、体力、免疫力を高める第一歩となるからです。元々高熱を出すタイプの人は、身体を元に戻す力の高い人になります。虚弱なタイプの人は、38度5分以上の熱を出す力がない人で、風邪をひいても微熱しか出せません。こういう虚弱タイプの人が、治療後に高熱を出せるようになったということは、体力、免疫力が高まってきた証拠となります。風邪をひく力があるうちは、重篤な病に進行することはまずありません。

逆にがんや脳出血等になる人は風邪をひかないタイプの人に多くみられます。また、ある時期から風邪をひかなくなっていきます。この傾向は風邪だけでなく、腰が痛い、肩がこる、首がこるといった場合にもあてはまります。こうした症状が表に出ているうちはまだ警告反応期であり、 病は深刻な状態に移行していないことになります。また血圧の高い人が風邪をひいた後、血圧が下がっている場合があります。発熱によって全細胞が活性化され、免疫力が高まれば、症状も改善されていきます。風邪は万病を治す機序として働いてくれるのです。風邪をひいて熱が出たときには、正しい対処の仕方を実行することが大事です。

風邪の正しい対処方法

風邪による発熱のピークは長くてだいたい3日間になります。この3日間の過ごし方によって健康度を増し、免疫力を強化することができます。 ① 解熱剤を使用しないで、氷による冷却法を実践する。 後頭部、前頭部の冷却を行なう。寝ている間中、氷枕で 頭部を冷やしてあげる。熱が下がりにくい場合は、わきの下や足のつけ根の部分(そけい部)を冷却する。 ② 足部を湯たんぽで温める(電気あんか等は皮膚を乾 燥させ静電気を発生し、体の電気の流れを停滞させるため避ける)。 頭寒足熱(ずかんそくねつ)により、血液の循環が促進され、熱による脱水症状が回避できる。脱水症状はただ水を飲めばいいのではなく、血液の循環を高めることで防ぐことができる。そのためには足部を温め、頭を冷やすという対処が大事である。 ③ 断食を行なう(水は飲んでも良い)。病巣である肺や 気管支を早く回復させるためには血液を多く導入しなくてはならない。しかし食事をとってしまうと消化器を働かせるために胃や腸に血液をとられてしまい、肺や気管支に送る血液量が不足するので回復を妨げる。 ④ 必ず横たわる。体を起こしておくのと横たわるのでは、 血液の循環に大きく関わる。人は横たわることで、血液の循環を助けることができる。
⑤ 自然な発汗を促進するために背部と胸部に馬油(バーユ)を塗布する。馬油は皮膚の汗腺の開閉機構を正常に戻す作用があり必要がなくなった熱を速やかに発汗と共に出させてくれる。 ⑥ せき、のどの痛みをともなう場合は、氷冷却を気管支やのどに行なうと効果的であり、体がらくになる。 ⑦ 熱のある間は入浴は絶対に避ける。熱があるときは皮膚の機能が低下しているため、汗腺の開閉がうまく行なわれなくなっている。そのために風呂で体温以上に温まると、汗腺を開いて熱をすてることになる。この際汗腺を閉じることができなくなっているので、放熱が続き再び発熱が起きてしまう。誤った判断の入浴は、気管支の炎症から肺炎へと移行し、危険をともなうことにもなる。洗髪も同様であるから、控えること。 ⑧ 高熱や下痢、おう吐、激しい頭痛などの劇症のときは自己良能が活発に働いている証拠。風邪と激しく闘う体力があるので、この時期は体はつらいけど命には別状はなく、逆に心配はいらない。大切な時期は、熱が下がって平熱よりやや低くなったときである。このときこそ安静にし、体を横たえて消耗した体力を元に戻す時期であることを覚えておいてください。 ⑨ 発熱や鼻水、せき等、これらの表に出ている症状は、 封じ込めてはいけない。体の余計な内熱を取り去り、自己 治癒力、免疫力を高めている対応なので、自然に通過させてあげることが大切。病気や症状は敵視し闘うのではなく、あるがままを受け入れ、共存していくことである。

自己良能にまさる薬なし

私たちの体に生じる症状はすべて、最後まで与えられた命を守ろうとしている正への対応の姿になります。風邪や発熱を一方的に悪い反応としてとらえるのではなく、体が懸命に生命力、免疫力を高めている姿であるという認識をもつことが大切です。『日にちがたてば時間の経過と共に、体は必ず元に戻っていきます。具合が悪くなったときには、体をゆっくり休め、静かに横たわり、充分な休暇をとることが、いちばんの薬になります。』 日本にはこのような「日ぐすり」ということばが伝え残されています。古来から継承され続けてきた英知を、今一度、見直していきたいものです。

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