頸椎の変形に関する考察

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頸椎の変形に関する考察            2003.10.14 有本 政治

人体に起こっている姿勢の歪みを前後面に限定して、椎間板ヘルニア
を捉えなおしました。脊柱の正常な生理的カーブの逸脱は一般の腰痛、
椎間板ヘルニア、腰椎分離症、腰椎すべり症を発生させる根拠と機序に
なることは、ご理解いただけたと思います。
 この生理的カーブの逸脱は、当然腰椎のみに起こるわけではありませ
ん。積木の積み方を倒れないようにするためには、特に上部で修正しな
くてはいけません。積木が後方に後方にずれて積まれていけばある段階
で倒れてしまいます。これを倒れないようにするためには、上部で前方へ
前方へと積み直し、重力線上でバランスを取らなくてはなりません。

この姿が、人体に置き換えれば、頭部や首を前方に凸出させたり、肩
を前方に移動させたり、逆に頭部を浮き出させたり、もっと修正不可能で
あれば受け口にしてあごを前方に凸出したり、出っ歯にしたり、また女性
の乳房を大きく重くすることで、前方への荷重を作り出したりと重力線上
への対応処置を講じているのです。これは当然、上部脊柱であります頸
椎の正常な生理的カーブを逸脱させることになってきます。
 この状態の長期的持続は、頸椎の椎間板の変形、椎骨自体の変形を
余儀なくしていきます。頸椎は7個の椎骨で構成され、その上には重い
頭部をのせています。頭部の重さの圧をうまく分散させるために、前方に
湾曲させて頸椎アーチを作っています。
 このアーチの回転半径(前湾カーブ)は下につながっている胸椎の後湾
カーブ、腰椎の前湾カーブと連動しながら、理想的な生理的カーブを形成
しています。故に理想的な回転半径(前湾カーブ)を必要とします。この回
転半径(前湾カーブ)が正常より逸脱すると重い腰部を支える支柱として
の作用、また応力を分散する作用を失っていくことは必然です。

 構造体としてのアーチ構造は(足の関節が代表的)は、重さを分散する
には理想的な構造です。故に古代より「橋」の構造はめがね橋といって
アーチ構造で作られることで強度を確保しているのです。現代の橋は、
逆アーチ構造をとっていて、アーチ型のワイヤーロープで2点間をつなぎ、
そのアーチ型のロープに橋をつり下げるという逆アーチ構造をとっていま
す。これも重さの一点集中を防ぎ、分散できる理想的な構造です。

この頸椎、前湾アーチにひずみが生じますと重い頭部の圧力が一点に
集中してきます。このアーチのくずれを古代のめがね橋(アーチ橋)に例え
て考察してみましょう。7個の石で構成されているアーチ橋だとします。
アーチ構造は、上からの重さの圧力に対して力を均等に分散できる理想
的な構造体です。これが、上からの力でなく両端(左右)から中心に向かっ
て力が作用しますと7個の石で作られているアーチ橋の頂点部は一番う
すく、構造的に横からの力に対しては、一番もろい部分です。上からの力
にはアーチ構造は理想ですが横からの力に対しては、もろくも崩れ去るの
です。7個の石で作られていて、左右3個づつでアーチ型を作るとトップに
のっかっている石が左右の応力によって浮き上がり、アーチ橋はいとも簡
単に崩れてしまうのです。

これと同様のことが頸椎の前湾アーチにも起こってくるのです。正常な
カーブの逸脱によって、頭部のトップにある頸椎4番に集中的に加わり、
頸椎の4番を前方に浮き上がらせてしまう力として作用します。これは重
大な構造体の破壊につながってきます。人間が生きていく上で致命的な
構造破壊になってくるのです。
 これはどうしても防止しなくてはなりません。そのための応急処置として
アーチ構造を守るためには、アーチのトップにあたる頸椎4番とその下の
頸椎5番を変形させて、二つの骨をくっつけることによって強度を増し、頸
4番の凸出をくい止めている姿なのです。必要な対応としてわざと変形
融合させていくのです。
 これも命を守る対応であり、必要な変形処置にあたるのです。さらに、
補強が必要であるなら、その下の頸椎6番までも変形融合させられる処
置を人体はとっていくのです。すべて、イノチを守り、脊髄神経の引き伸
ばしを守り、アーチの破壊をくい止める必要不可欠な対応処置であること
を認識していただきたいのです。

人体に起こっている変形は、悪い対応ではなく、すべてイノチを守るた
めの対応であるのです。
 この視点の欠落が、数々の悲劇的な医原病を作り出していってるこ
とに気づいてほしいのです。
 故に脊柱の生理的カーブを逸脱したタイプの人は、X線で頸椎の写真
を撮るとほとんどの人が、頸椎の4番、5番間に狭窄、変形、融合が見つ
かるのです。そして脊髄神経がでる椎間孔が狭くなっているという指摘
を受け、変形性頸椎症というの診断を下されるのです。

例えば手、指の痛み、しびれ、まひはまずX線診断で、頸椎の4番、5
の椎間板症、椎間狭窄症、変形性頸椎症という診断がつく場合がほとん
どです。しかし腰椎椎間板ヘルニアの項で解説してありますように、神経
の一点圧迫による痛み、しびれ、まひは発生しません。
 頸椎全体のカーブの異常から神経が引き伸ばされたり、あるいは首の
前方凸出と肩の巻き込みにより、鎖骨と第一肋骨間のすき間が狭くなっ
たり、周辺筋群の硬化によって引き起こされている場合がほとんどなの
です。斜角筋症候群、鎖骨下症候群という症病名として、取り扱われる
べき症状であります。
 これを改善するに当たっては積木理論に従って、全体の脊柱カーブを
正常に復し、バナナ理論に従って身体の捻れの歪みを修正することがま
ず前提であり、これによりほとんどが症状を改善することが可能になるの
です。
 どんなに狭窄、変形融合があろうとも、椎間孔が狭くなっていようとも
イノチを守るために必要な頸椎生理機能は最後まで失わせません。
 これは生物としてあたりまえな処置です。変形はすべて悪とする一方
的な解釈は正・反二面をを有する宇宙、自然界・社会の法則からしても一
方向からしかみていない解釈と言わざるを得ません。
 人体積木理論は、このように現代人が失ってしまった、全体と部分
の関連を見事に浮き彫りにしてくれるものであります。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  

前後面の歪みは子宮後屈、顎(ガク)関節症を生み出す最大要因

 現代女性に多く見られる、子宮後屈、顎(ガク)関節症はどういう根拠と機
序をもっているのか、積木理論的考察を試みてみたいと思います。
 脊柱の生理的カーブの増大型のタイプと子宮後屈(不妊症、流産しやす
)、顎関節症は深い関わりが認められます。
 脊柱のカーブを規定しているのは、脊柱という柱の基底部であります骨
盤の腰仙角が元になっています。たびたび述べてありますように、積木の
積み方が一方向にずれて積まれますと、ある段階で積木は倒れてしまい
ます。これを修正するためには逆方向に積木を積み上げないと重力線上
にバランスを保つことができません。特に人体の上部においては、すべて
の動く関節を導引して、その修正に当たらざるを得ません。
 
 人体におきかえますと、脊柱の基底部であります骨盤の前傾が強くなれ
ばなるほど、腰仙角は増大します。故に腰椎の前湾カーブは増大せざる
を得ません。胸椎の後湾カーブも増大します。しかし胸椎に関しては逆に
前方に胸を突き出してバランスを取る場合も程度によって引き起こされま
す。頸椎は前湾カーブを増大させます。いわゆる頭部が前方に凸出してい
る姿形です。
 このように骨盤の前傾(ヒップアップ体型)が極度に強いタイプの人は、積
木の積み方の修正に限界が生じてきます。


 前述してありますように、本来なら胸椎部は後湾カーブを強くすることで
バランスを取っていくのですが、後方への転倒を防止するために、逆に胸
を突き出すことでバランスを取るように働いていくのです。これが表現はよ
くないのですが、いわゆる「出っ尻・はと胸」といわれるタイプの人なのです。
はと胸だけでは、まだバランスがとれない場合は、女性であれば乳房を
大きくすることで前方への重りとしてバランスを保とうと身体は対応して
いきます。
 現在では、身体は細くやせ型にも関わらず、乳房だけが発達している女
性を見受けることが多くなってきました(これも一種の異常バランス)

 これらのタイプの女性は骨盤部の前傾が極度に大きいのが特徴です。
これを修正するのに積木の積み方を変えることでは対応しきれなくなった
場合には、もっと違う対応処置を必要とします。この異常バランスのとり方
が前述の乳房肥大化であり、今回、テーマとする子宮後屈、顎関節症な
のです。
 骨盤の前傾が極度になった場合、骨盤内部にあります移動、可変の可
能な器官であります子宮を後傾させることで、前方への傾斜をくい止めよ
うとするように作用するのです。
 本来、前傾した状態になっている子宮が、後方に回転を起こした姿が
「子宮後屈」なのです。子宮後屈の女性が不妊や流産しやすくなることは、
産科の常識となっています。しかし、これがどうして引き起こされていくか
は何も解明されていません。

 二足直立を果たした人類は、この縦長な構造体を重力線上にバランス
を保つことが一つの命題であります。これを達成する上では、あらゆる手
段を用いて、幾重にも対応策を用意していないと、この命題は達成できま
せん。これも生きるための対応と捉えてよいでしょう。
 次に、人体の頭部におこる顎関節症という歪みも下部構造のひずみが
大きく、上部の頸椎カーブや頭部の前方凸出でも対応できなくなった場合、
動く関係を総動員して対応します。この姿が、顎関節の前方移動を発生さ
せる最大の要因として働くのです。この状態の長期持続が顎関節症を引
き起こす機序となっているのです。これに捻れの歪みが加味されることは、
言うまでもありません。

まとめ
 
 今から約70年くらい前に、アメリカの生んだ偉大な生理学者であるW・
B・キャノン博士が「Wisdom of body」、日本では「からだの知恵」という
本を発表しました。これは生体に備わっている「恒常性維持(ホメオスター
シス)」という概念の発見でした。
 恒常性維持とはわかりやすく説明すると、生物はその「種」の生命を維
持するために生体の内部環境を外界からの刺激に応じて時々刻々に変
化させて、生命維持のための機構を一定の状態に保たせるように働くと
いう概念です。具体的に言うと人体の体温は常に36.5度内外に保つこと
で、人体のすべての生理機能が円滑に営まれるための絶対条件です。
 これを維持するために体温が低くなれば熱を発生させる機構を働かせ、
36.5
度より熱が上昇すると、すみやかにその熱をすてるシステムを作動
させて、恒常性を保っているのです。
 この視点にたてば身体に起こるあらゆる反応は、あるいは症状は恒常
性維持のための対応としての発熱、発汗、嘔吐、下痢、咳、鼻水、目から
涙であり、痛みの発生、関節の変形、筋の異常収縮等の発現は何らかの
サイン、何かを守るための必要な対応として発現すると考えられるのです。
 約70年くらい前にW・B・キャノン博士が提唱したこの概念は、生理学の
世界に多大な影響をもたらしました。しかし、70年後の今日、この基本概
念はどこかに忘れ去られ、細かく細分化され迷路に迷い込んだ現代の
生理学の姿があるのです。
 現代人のモノ・コトの考え方が、近代科学的な思考法によって、分析、
分解を重視するあまり、部分のみに捉われ、全体と部分との関連を無視
して、走り出したところに大きな問題点があるのです。
 この人体積木理論は、現代人の失いかけた「全体と部分」との関連のた
いせつさを如実に示してくれています。部分に起こった病変にだけ目を向
けては、ほんとうの根拠と機序が見えてきません。
モノ・コトの根拠と機序を明らかにすることで、その対処法を明らかにする
ことでできるのです。
 子どものおもちゃである積木が人体に起こる歪みの本質を、いとも簡
単に解明してくれました。そして全体と部分との関連も見事にわかりやすく
示してくれています。
 古来から、子どもの心を捉えてはなさないおもちゃ(独楽、積木)や遊び(
遊び)の中には、自然の法則、人体の法則が含有されているからこそ、素直
な子どもの心を捉えるのでしょう。
 人体のナゾを解く「鍵」は、バナナや積木の中に隠されていました。
「真実はシンプルな日常の中に隠されている」ということばの意味を今一度
かみしめてみたいと思います。
                               

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